Story
故郷”を裏切り続ける父の秘密、
失われた“郷里”に焦がれる娘の罪
四年前に町にやってきた植田は不動産業を生業としている。彼にはある噂が囁かれている。それは訳ありの土地に値段をつけて外国人に売っているというものだ。最近はダムのそばの医療センターの外国人雇用問題にも関わっているという話だ。元町長の三好は地元に愛着がなく土地を荒らすようなことをする植田を快く思っていなかった。
植田には妻と離婚後、男手一つで育てた高校三年生の娘・奈々がいる。奈々が下校しようと学校の駐輪場に向かうと何者かによって自転車が壊されていた。ファミレスでのバイトの時間が迫り困っていたところ、見かねた同級生の公介が送ってくれた。道中、公介に奈々は言う。「自転車を壊したのはきっとお父さんの仕事関係の人だってわかってる。お父さん、人を立ち退かせたりして恨みを買うことがあるから―」
来年の春に高校卒業を控える奈々は、幼い頃から父の都合で転校が続いた。この町は最も長く住み、慣れ親しんだ場所である。父のせいで嫌がらせをされることもあるが、町で働きたいという希望があった。
植田は以前町に住んでいた道子と駅前で落ち会っていた。道子は三年前に幼い息子を失った後、住んでいた土地を手放し植田に売っていて、三好や幼なじみの優子に会うために一時的に帰って来たのだった。優子は両親の死後、自宅の売却をしつこく迫る植田を毛嫌いしている。
ファミレスで働く奈々。その日は植田が車で迎えに来ていた。帰りの車内で二人は卒業後の進路のことで意見がぶつかる。植田は娘には地元から離れて東京に行ってほしかった。「金の心配はするな」と告げるが、町で暮らし続けたいという奈々の気持ちは変わることはなかった。
植田はブローカーとして自分が荒らした土地に残る娘のために、三年前のある夜の事故について打ち明けることにした―